2009年9月10日木曜日

明日、基本計画特別委員会を傍聴しに行きます。

明日11日は、昨日ちらっと書きました文部科学省の第5回基本計画特別委員会(第4期科学技術基本計画)を傍聴しに行く予定です。

科学技術基本計画といってもぴんと来ない方もいるかもしれません。
現在は、第3期科学技術計画期間中(平成18年度から平成22年度までの5年間)で、第4期基本計画は、平成23年3月に閣議決定をすることが想定されています。
この第3期の説明が文部科学省のHPに書いていますが、 科学技術基本法の規定に基づき、政府は、科学技術の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るためにこの計画を決定した、とあります。

「科学技術基本計画は、今後10年間程度を見通した5年間の科学技術政策を具体化するものとして策定するもの」であり、よく耳にする重点4分野(ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料)などというのも、この基本計画が元になって進められています。
昨今のイノベーションの重視もこの基本計画が根っこにあります。
こうした基本的なコンセプトとともに、より具体的な推進すべき研究領域や、人材育成の方策などが盛り込まれ、国における様々な科学技術政策の根拠となっているもので、最終的には個々のファンディングや大学の方向性に大きく関わってくるものです。

この基本計画自身は内閣府の総合科学技術会議で議論され、その案が最終的に閣議決定されます。
なのに文部科学省でその前に特別委員会を設置して議論を進めているのはいろいろと理由があるのでしょうが、一つには科学技術予算のかなりの部分(60%以上)が文部科学省関連の予算他というのもその理由かと思います。(21年度の省庁別予算についてはこちらの「関係府省による概算要求(PDF)」に載っています。)
という訳でこの基本計画特別委員会で基本計画が決定される訳ではありませんが、今後の総合科学技術会議での議論に大きな影響を与える委員会であり今度で5回目になります。

これまで委員会の大きな議論としては、「我が国が中長期的に目指すべき国の姿」「イノベーション人材育成」がありました。

特に「目指すべき国の姿」とは大きく出たもので、野依座長も発言されていますが、本来このレベルの委員会では議論しきれないものではありますが、かといってこの認識がある程度そろっていないと、基本計画の枠組みを十分議論できないのも事実でしょう。
重点的に推進する科学技術ということについては、多くの委員の方が基礎研究、それも多様な学術研究の重点化という意識を持たれているような印象を受けました。
ただし、個々の研究者レベルに留まる自由発想研究というものから、たこつぼに入らない総合的な学術研究(環境?)の中から、創造的な研究の芽を育てて、それを社会に資するものへと育てていく様な意識も強く感じ取れます。

人材育成は、どの話の中でも挙がってくる話ですが、まだ具体的に方向性は見えてきていないように思われます。
様々な意見が述べられていますが、国際的な人材獲得競争という点については、強く意識されているのではないかと思います。
また、キャリアパス、トップサイエンティストの育成といったことも相変わらず議論に多くの時間が割かれています。
どうも議論の対象があちらこちらに飛んでしまっている印象が強く、どういった人材を意識しているのか、その時々の対象が委員の中で統一できていないようにも思えます。

というのも私見としては、人材育成を考える場合、世界的なトップ研究者をいかに確保できるのかということに議論が集中しすぎているように常々思っているからです。
今の多くの研究現場は一人の独創性のあるスターだけでは何も出来ないことは明らかで、周りに様々な専門性に優れた研究者、技術者がいて、また、マネージメントの専門家、外部との交渉や技術移転などに秀でた方などそれぞれの役割をこなせる能力を有するメンバーで固めなければ太刀打ちできない状況であると思います
そうした環境があって、初めて独創性のある研究成果が出て、またそれが社会へと還元されていく道筋が生まれてくるという認識を強く持つ必要があるのです。

傑出した独創性を有する人材は、ある意味創ろうとして創れるものでもないように思います。
そういう人材が出たときに、周りを固めるメンバーがいて、はじめて目的とする独創的成果が実を結ぶと考えると、実は科学技術政策として着実に用意すべきなのは、こうした周りを固められる人材の育成ではないか、そして今日本に欠如しているのは、そういった人材の居場所と人材育成システムではないかというのが私の考えです。
独創性人材の芽を摘んではいけないが、その育成手段にあまり枠をはめる、政策的に誘導する、というのはどだい無理がある考えのように思えて仕方がありません。

委員の方の発現の中にも同じような趣旨のコメントがちらほらと出ていますが、まだそういった考えが強く示されているような雰囲気ではありませんね。



このあたりはまた追々独り言を書いていきたいと思います。

ではまた。

0 件のコメント: