2012年1月17日火曜日

多次元トレーニング&レクチャー「感覚情報処理の神経回路の構造と機能」

概要:
 多次元共同脳科学推進センターでは、若手研究者(大学院生を含む)を対象に「感覚情報処理の神経回路の構造と機能」に関する講義・実習を実施します。脳の研究を進めるに当たり、脳の解剖学的知識は非常に重要ですが、若手研究者や様々な分野から参入しようとする異分野の研究者の方にとっては、十分な講義や実習を受ける機会がありません。またモデル動物としてマウス、ラットやサルが多くの研究に用いられていますが、異なるモデル動物間やヒトとの種間の解剖学的な比較について学習する機会は殆どありません。
 多次元共同脳科学推進センターではこのような状況を踏まえて、マウス・ラット、サル、ヒトの解剖学的な比較を元にした多次元トレーニン&レクチャーを実施いたします。前回は運動系を中心とした講義・実習を行いましたが、今回は、感覚情報処理の神経回路を中心に異なる種間の脳の解剖学の講義・実習を実施します。また、解剖学の講義・実習と組み合わせて、感覚情報処理の機能に関する講義及び実験見学を実施します。
 対象は、大学院生、ポスドク、助教等の若手研究者で、10名程度を選考いたします。応募者が多数になった場合は、脳科学以外の異分野から新たに脳科学に進んで来られようとしている方や、解剖学に接する機会が少なかった方を優先的に選考します。

講義・実習スケジュール
3月21日(水)
11:00−13:00 講義:視覚系の神経解剖(高田昌彦 教授 京大霊長研)
13:00−13:30 昼食
13:30−17:00 実習:視覚系の神経解剖(高田昌彦 教授 京大霊長研)

3月22日(木)
 9:00−10:00 講義:サルの視覚野の構造と機能(伊藤南 准教授 生理研)
10:00−11:30 実習:サルの視覚野からの電気記録(実験の説明と見学)(伊藤南 准教授 生理研)
11:30−12:30 昼食
12:30−14:00 講義:聴覚・体性感覚の神経解剖(高田昌彦 教授 京大霊長研)
14:00−17:00 実習:聴覚・体性感覚の神経解剖(高田昌彦 教授 京大霊長研)


3月23日(金)
 9:30−10:30 講義:齧歯類の視覚に関わる神経回路(吉村由美子 教授 生理研)
10:30−11:30 講義:齧歯類の体性感覚に関わる神経回路(古田貴寛 助教 京大医)
11:30−12:30 昼食
12:30−13:30 講義:MRIを中心にした人体神経解剖(田中悟志 特任助教 生理研)
13:30−14:30 実習:MRI実験室とMRI撮像の見学(田中悟志 特任助教 生理研)
14:30−15:30 講義:意識と注意の神経回路(吉田正俊 助教 生理研)

参加支援内容:
受講者には生理研への往復の旅費、三島ロッジ宿泊費を支給いたします。


申し込み情報:
氏名、所属、学年・職位、連絡先(所属先住所、E-mail)、自身の現在の研究内容、将来取り組みたい研究内容、本企画に期待する点、についてe-mailにてご連絡下さい。
書式や記載量に制限はございません。参考資料などを添付していただいても結構です。
宛先:tajigen_sympo@nips.ac.jp ※メールアドレスの不備を修正しました
〆切:2012年2月16日(金) ※締切日を変更しました。

※生理研多次元共同脳科学推進センター公式HPが現在トラブルのため、このHPを使用しています。

2009年11月4日水曜日

多次元脳のつぶやきに人材育成に関わる提言を書きました。

主張オンリーなので、こちら「多次元脳空間」ではなく、「多次元脳のつぶやき」の方に最近考えていたこと「大学の役割(その1)」を少しまとめてみました。ご興味のある方はご覧いただき、コメントをいただければ幸いです。

2009年10月14日水曜日

第5回基本計画特別委員会:社会との連携

前回このブログで基本計画特別委員会での主要議題(研究評価、研究資金制度、社会との連携)の研究評価を取り上げましたが、その最後のところと関わってくる(と私が思っている)社会との連携について思う所を書いていきます。

その前に実は第6回の委員会が10月1日に既に開催されています。
こちらにも参加しましたが、この回はもう一つ有益な情報は得られなかった気がしますので、まだ第5回の続きをします。(といって更新が遅いいい訳ですみません。)
議事録や資料がまだなかなかアップされていないので、かろうじてこの情報もその先を行っているという状況です。
また、第7回も今週末10月16日に開催され、こちらも傍聴しますので、なるべく早くお知らせするようにしたいと思います。

ということで社会との連携についてです。
9月14日のブログにも少し書きましたが、科学技術コミュニケーションの重要性は既に第3期でも取り上げられていて、今回も科学技術の内容を広く専門家以外の方にも理解してもらおうという広報型の活動は引き続き重要であろうと言うことでした。
そのための科学技術コミュニケーターの重要性も述べられていたと思います。

但し当時(第3期の検討当時)の科学技術コミュニケーションは、成果を社会に伝える翻訳者としての位置づけが強く、今回の議論は社会から科学技術へのベクトルを担う役割が主に議論されていたと思います。
野依先生もぽろっと漏らしていましたが、「科学技術コミュニケーターに方向性を御指南いただく事になると言うのは個人的にはいやですが、しかし重要な役割」だという位置づけです。

議論にも出ていましたが、このような役割は科学技術の成果を理解して翻訳する能力とはまた異なるもので、政策について理解し提言できる人材と言うことになります。
そのような人材がいるのか?というコメントも何人かから出ていましたし、確かにそんな人材は難しいだろうなと皆さんやはり思われているようでした。


委員会の議論では出ていなかったと思いますが、これは最近よく出てくる双方向性の科学技術コミュニケーションとも少し違う役回りのように思います。
双方向性という場合、研究者と一般の方との間での双方向性を取り上げていることが多いのではないでしょうか?

この点、個人的には前から気になっていたのですが、研究者と一般の方の双方向性だけではちょっと足らない(双方向性自身もまだ全く確立できていませんが)のではないかということがあります。
コミュニケーションの目的の一つとして、一般の方に研究の現状や意義、おもしろさなどを理解していただいた上で、世の中の意志も織り込んで研究環境や研究システムを良くしようと言うことがあるとしたら、それを実現するための政策立案段階に一般の方の考えを反映できる(そのままではありませんが)ことが必要になると思います。

しかし研究者と一般の方との双方向のコミュニケーションを通じて、研究者が理解してそれを実行する、あるいは政策立案に研究者が主体となって取り組むことが出来れば良いのですが、純粋に研究に集中しようとすればするほど、政策立案といったことを強く意識することは実際上難しく、なかなか出来ないのが現実でしょう。

そのために研究者と一般の方との双方向コミュニケーションを担う人材には、更に、両者と政策立案者との間のコミュニケーションをとれる能力が求められてくるのだと思います。

研究者と政策立案者の間をつなぐ役割というのは実はPOの役割に当たると考えられます。

POの仕事というと課題の管理という事で、普通決まったプログラムについて進捗を管理するものと思われがちですが、米国のPO(の一部)や日本のPOの位置づけの説明にプログラム方針の見直しというカテゴリがあります。
その中には担当プログラムとは別に新規のプログラムの設計・立案などが含まれています。
この設計・立案の過程では、現状の科学技術の俯瞰から今後の方向性の把握といった研究者の素養が求められ、かつ、政策的観点からの絞り込みといった能力が求められます。
この政策的観点というところは、主に社会ニーズの把握に当たり、ここに一般の方(企業や各種団体なども含みます)と政策立案者とのコミュニケーションを取り持つ能力が実は必要となってくることになります。

それらをふまえていろいろと科学技術コミュニケーターと議論をしたことがあるのですが、私自身は双方向性というのは単純化しすぎで、循環型あるいはネットワーク型と捉えて、科学技術コミュニケーションを議論すべきだと考えています。
そこには一人の人材ではおそらく対応できない広がりがあり、それぞれの役割を担える人材育成が必要となってくるでしょう。

より分かりにくくなるかもしれませんが、例としては、
研究者→(成果、コミュニケーター1)→一般の方→(コミュニケーター2)→官僚→(政策、コミュニケーター3)→研究者
といった基本的な流れがあるのではないかと思います。
もちろん、
研究者→(成果、コミュニケーター1)→官僚

一般の方→(コミュニケーター2)→研究者
といったものも入ってきます、だからネットワーク型。
更に、研究者→(コミュニケーター4)→研究者も必要な気がします。

本来行政は、一般の方→(コミュニケーター2)→官僚が確立しているべきですが、日本にはその仕組みがあまりないように思います。
研究者→官僚→(政策)→研究者の関係が強く、もっとオープンな仕組みを作らなければ、新しい大発見や世界的な状況の変化などに対応してダイナミックにシステムを適応させていくことができないでしょう。

そのためにも様々な場面でのコミュニケーションを媒介できるいろいろなタイプの科学技術コミュニケーターが重要で、その育成方策と行ったものを検討していったほしいと思っています。

まためちゃめちゃ長くて分かりにくい文章になってしまいました。
次回はもう少し間隔を短く書き込みたいと思います。

2009年9月29日火曜日

第5回基本計画特別委員会:研究評価

前回の委員会での主要議題(研究評価、研究資金制度、社会との連携)について少し詳細にコメントしたいと思います。

まず研究評価ですが、その意義として
1.人材育成
2.研究コミュニティーの活性化
3.社会への説明責任
があげられている。

いずれもポジティブ指向な表現で、選別というニュアンスではない。少なくとも表現の上ではそうなっています。

それを実現するための基本的考え方として、
1.目的に応じた評価システムの再構築
2.階層構造と階層間の関係が明確化された評価システム群の形成
3.一貫性のある評価とマネジメントの実施
が示されています。

1は、評価の労力も考えようといった、評価に関わる様々な主体者を意識してシステムを再構築しようと言う趣旨のよう。
3は、事前、中間、事後評価の連続性という事。
これはそれなりにすぐ分かる話ですが、2の意味はちょっと分かりにくい。しかし今回の肝でもあるようだ。

この階層とは、政策ー施策ープログラム・制度ー研究開発課題(プロジェクト)を意味するらしい。
従来はともすると課題レベルの評価のウエイトが大きくなっていたのを施策ープログラム・制度レベルをより重視しようと言うことのようである。
個々の課題がどうであったという事で個人を選別するというのではなく、それらの成果の評価からプログラム・制度やその元となった施策が適切であったか、今後どう変えるべきであるかというレベルでの評価をより充実させようと言うことだと思われる。

その結果、最終的には国の政策レベルでの本来の目的実現により有効な施策ープログラムを構築したいということのようです。

こうした制度設計を述べている中でちらちらと目に付くのは、不確実性が高く長期的な視点が必要な研究、学術研究の多くがそれに当たると思うが、そういった研究への配慮、意識が強く出ている点があります。
「当初の目標達成に失敗しても予期せざる波及効果に大きな意味があるかを積極的に評価」といった文言にそういった姿勢がよく現れている。

一方で、社会的課題解決のための研究に対しては、目的達成への道筋や必要技術群の明確化、といった視点で明確に評価することも当然述べられている。

いずれにしてもより上位にある目的をどう達成するのかという観点が強く打ち出されている点は、ポジティブ指向でよいと思います。

これを実現するためには、「研究開発評価に係わる専門人材の育成」が上げられているが、委員会での議論の中で、課題評価についてはこれまでのピュアレビューシステムなどの実績もあり、科学技術の専門家がその役割を担えるが、より上位のプログラム・制度や施策レベルでの評価が出来る人材はそういったこれまでの評価者とは異なり、ほとんどいないのではないかという意見が出ていた。

この意見は全くその通りだと思う。

実際にはこういったレベルでの役割を担う人材として、プログラムディレクター(PD)やプログラムオフィサー(PO)といったポジションが期待されるのであるが、日本においてはまだそういう意味でのPD、POはほとんどいないであろうし、また育成できる組織もまだ無いと言うのが現実でしょう。

私の持論の一つに、米国ではPD、PO制度が50年ほどの実績があり、その中で充実したシステムが出来てきたのに対して、日本ではまだ10年にも満たない。実際には未だ形式的なシステムでもあるとも言える状態で、これを米国の半分の期間の25年で現在の米国相当の(同じではない)システムに出来れば御の字ではないか、というものがあります。米国などの先行事例があるので、全く初めから構築するよりは早く出来てほしいので25年とか言っていますが、かなり適当な数字ではあります。

今回施策レベルでの評価の充実ということが取り上げられているのは非常に重要な点ですが、第4期の基本計画内(平成23年度から27年度)でこれを実現できると考えるのはかなり楽観的であって、より長期的な展望としてそうしたシステムを実現するために次の4期でどうするのかと言う議論に掘り下げていただければ良いなあと思いました。

とりあえず今回はここまで。

2009年9月14日月曜日

第5回基本計画特別委員会を傍聴して

金曜日12日に文科省の基本計画特別委員会を傍聴してきました。

今回は評価と研究費配分に関する議論を中心に進められました。
評価に関しては、個々の課題評価のことを多くの研究者は意識してしまうと思いますが、委員会での評価の議論は施策、プログラムレベルでの評価に重点が置かれていて、評価の階層構造の再認識とその階層間を繋ぐ、下の階層から上位の階層にその結果を反映させる制度設計について議論が行われていました。

また、そうした評価に対する議論の背景の一つには評価疲れと言う問題点も意識されていると思われます。これは研究者が研究に集中出来る環境を4期の基本計画ではより強く打ち出そうとしていること(私見)とも関係しているように思いました。

評価の階層性を明確にし、より上位のプログラム、施策、政策の再検討に結びつけるというのは、ある意味以前からも言われていることですが、より具体的に見えてくると大きく科学技術の振興自身が変わってくると期待されます。

教育研究費配分については特定の大学への集中の度合いが日本では大きいことがデータとして示されたのは興味深かったです。
教育研究費獲得額トップから獲得額が10%までに減少する程度を日米で比較していて、米国の方が減衰が(はるかに)ゆっくりだというものです。

このデータを単に一面的に議論することはできないという点は、委員会でも何人もの委員の方から指摘されていました。
集中すべきものと基盤的な研究費をどう配分するかという議論と直接関わってくるからです。
前回までの委員会でも基盤的な研究費(多くは運営費交付金を指すものと思われます)重視の意見が多かったと思いますが、今回委員長の野依先生が、運営費交付金1%減阻止ではなく、運営費交付金倍増提案をされていたのは、いろいろな意味で野依先生らしいなと思いました。

これら研究費の制度については、PO、PDの話が頻繁に出てきていましたが、次の論点も含めて個人的には多くは肯定できるけれど、もう一つ議論できていないところがあるなと思いました。これについてはまた後日。

最後は科学技術と社会の関わりに関する議論でした。
科学技術コミュニケーションを主な話となっていて、科学技術コミュニケーションにより力を入れていくべきという事ではほとんど全会一致でなかったかと思います。
また、特に科学技術を社会に伝えるというだけではなく、科学技術政策に社会からフィードバックするためにも科学技術コミュニケーターが必要であるという方向性であったように思います。
この役割、じつはPO、PDの話とも深く絡んで来ると思っています。

どの内容も一言二言では足りない論点があるので、今後ボチボチここに書いていきたいと思います。
まずは全体のご紹介まで。

しかし文科省の第2講堂は音響が悪く、発言がよく聞き取れないところがたたありました。
もうちょっとなんとかならないものでしょうかね。
資料のホームページへのUPも、他の委員会より遅いような気もしますね。

2009年9月10日木曜日

明日、基本計画特別委員会を傍聴しに行きます。

明日11日は、昨日ちらっと書きました文部科学省の第5回基本計画特別委員会(第4期科学技術基本計画)を傍聴しに行く予定です。

科学技術基本計画といってもぴんと来ない方もいるかもしれません。
現在は、第3期科学技術計画期間中(平成18年度から平成22年度までの5年間)で、第4期基本計画は、平成23年3月に閣議決定をすることが想定されています。
この第3期の説明が文部科学省のHPに書いていますが、 科学技術基本法の規定に基づき、政府は、科学技術の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るためにこの計画を決定した、とあります。

「科学技術基本計画は、今後10年間程度を見通した5年間の科学技術政策を具体化するものとして策定するもの」であり、よく耳にする重点4分野(ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料)などというのも、この基本計画が元になって進められています。
昨今のイノベーションの重視もこの基本計画が根っこにあります。
こうした基本的なコンセプトとともに、より具体的な推進すべき研究領域や、人材育成の方策などが盛り込まれ、国における様々な科学技術政策の根拠となっているもので、最終的には個々のファンディングや大学の方向性に大きく関わってくるものです。

この基本計画自身は内閣府の総合科学技術会議で議論され、その案が最終的に閣議決定されます。
なのに文部科学省でその前に特別委員会を設置して議論を進めているのはいろいろと理由があるのでしょうが、一つには科学技術予算のかなりの部分(60%以上)が文部科学省関連の予算他というのもその理由かと思います。(21年度の省庁別予算についてはこちらの「関係府省による概算要求(PDF)」に載っています。)
という訳でこの基本計画特別委員会で基本計画が決定される訳ではありませんが、今後の総合科学技術会議での議論に大きな影響を与える委員会であり今度で5回目になります。

これまで委員会の大きな議論としては、「我が国が中長期的に目指すべき国の姿」「イノベーション人材育成」がありました。

特に「目指すべき国の姿」とは大きく出たもので、野依座長も発言されていますが、本来このレベルの委員会では議論しきれないものではありますが、かといってこの認識がある程度そろっていないと、基本計画の枠組みを十分議論できないのも事実でしょう。
重点的に推進する科学技術ということについては、多くの委員の方が基礎研究、それも多様な学術研究の重点化という意識を持たれているような印象を受けました。
ただし、個々の研究者レベルに留まる自由発想研究というものから、たこつぼに入らない総合的な学術研究(環境?)の中から、創造的な研究の芽を育てて、それを社会に資するものへと育てていく様な意識も強く感じ取れます。

人材育成は、どの話の中でも挙がってくる話ですが、まだ具体的に方向性は見えてきていないように思われます。
様々な意見が述べられていますが、国際的な人材獲得競争という点については、強く意識されているのではないかと思います。
また、キャリアパス、トップサイエンティストの育成といったことも相変わらず議論に多くの時間が割かれています。
どうも議論の対象があちらこちらに飛んでしまっている印象が強く、どういった人材を意識しているのか、その時々の対象が委員の中で統一できていないようにも思えます。

というのも私見としては、人材育成を考える場合、世界的なトップ研究者をいかに確保できるのかということに議論が集中しすぎているように常々思っているからです。
今の多くの研究現場は一人の独創性のあるスターだけでは何も出来ないことは明らかで、周りに様々な専門性に優れた研究者、技術者がいて、また、マネージメントの専門家、外部との交渉や技術移転などに秀でた方などそれぞれの役割をこなせる能力を有するメンバーで固めなければ太刀打ちできない状況であると思います
そうした環境があって、初めて独創性のある研究成果が出て、またそれが社会へと還元されていく道筋が生まれてくるという認識を強く持つ必要があるのです。

傑出した独創性を有する人材は、ある意味創ろうとして創れるものでもないように思います。
そういう人材が出たときに、周りを固めるメンバーがいて、はじめて目的とする独創的成果が実を結ぶと考えると、実は科学技術政策として着実に用意すべきなのは、こうした周りを固められる人材の育成ではないか、そして今日本に欠如しているのは、そういった人材の居場所と人材育成システムではないかというのが私の考えです。
独創性人材の芽を摘んではいけないが、その育成手段にあまり枠をはめる、政策的に誘導する、というのはどだい無理がある考えのように思えて仕方がありません。

委員の方の発現の中にも同じような趣旨のコメントがちらほらと出ていますが、まだそういった考えが強く示されているような雰囲気ではありませんね。



このあたりはまた追々独り言を書いていきたいと思います。

ではまた。

2009年9月9日水曜日

ブログ再開か?

ご無沙汰しています。
あっという間に約6ヶ月間も書いていませんでした。(Googleのニュースだけは大変よく働いてくれていたようですが。)
内容をかなり堅めに設定していたので、一旦書かずにいると、なかなか再開できずに今日に至ってしまいました。
基本同じく堅いブログではありますが、少し柔らかめのものも入れて、もう少しは書き込んでいくようにしたいと思います。

この半年間の間にはいろいろと本来ここで取り上げなければならなかったことが目白押しでした。

科学政策面では、まずパブコメを受けて最終的に修正された「長期的展望に立つ脳科学研究の基本的構想及び推進方策について ~総合的人間科学の構築と社会への貢献を目指して~」(第1次答申)が6月23日に科学技術・学術審議会から文部科学大臣に手交されました。
いろいろとご意見のある方も多いと思いますが、かなり細部にわたり考えられていますので、これが有効な脳科学の推進に繋がっていけばよいと願っています。

この答申に書かれている内容に関連して、22年度の概算要求として「脳科学研究戦略推進プログラム」の新規プログラム2件が文部科学省より出ています。
※以下のPDF内11ページ参照。注)1,798kBあります。
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2009/08/28/1283693_017.pdf

今特に注目している動向は第4期科学技術計画策定に向けての動きです。
現在は主に文部科学省の基本計画特別委員会(第4期科学技術基本計画)において議論が進められていますが、これまでとは少し違ったトーンになっている印象を持っています。
また、これらについてはこれから順次コメントしていきたいと思っています。

科学技術政策にとってこの基本計画の策定は非常に大きな影響を持っています、が、それ以上に影響しそうなのが政権交代後に何がどう変わるかという所ですが、今の段階で変に予測しても当たらなそうですね。

個人的には5月に東北大脳科学グローバルCOE キャリアパスセミナーでお話しさせていただき、同じく5月末に「神経科学リテラシー」プロジェクト(JST/RISTEX受託研究)主催のシンポジウム“神経科学リテラシー”でもお話をさせていただきました。内容は、お知らせのところに近いうちにUPします。

個人的な話としましては、文部科学省「脳科学研究戦略推進プログラム」のプログラムオフィサーを7月よりお引き受けしております。
「社会的行動を支える脳基盤の計測・支援技術の開発」(課題D)を担当いたします。
今後の活動についてはHPにて順次公開される予定ですが、まだ準備が出来ていません。

最後に一つお知らせ。
私の所属しています、生理学研究所多次元共同脳科学推進センター主催で、来週の日本神経科学大会サテライトシンポジウムとして、「脳科学教育の現状と理想 —バーチャル脳科学専攻設立を目指して—」と題するワークショップを開催します。
急遽決まったもので、通常の学会講演の時間外に行うことになり、20時からと言うことですが、脳科学が主体となっている大学院教育拠点の方に、実際の現状と問題点などを語っていただき、より良いものにして行くにはどうすればよいかを議論したいと考えています。
様々なご意見の方にご参加いただければと思っています。

こういった内容についてのコメントを半年も間を空けずに書き込んで行く予定です。