2009年2月20日金曜日

パブコメ:脳科学の長期展望02

「長期的展望に立つ脳科学の基本的構想及び推進方策について」(第1次答申案(中間取りまとめ))とは何か?
この文書は、脳科学の発展性と社会的な重要性を念頭に、今後長期的な研究の推進をどのようにするべきかを問われた文部科学大臣からの諮問に対する答申の途中の案と言うことになります。
この答申案のとりまとめは、科学技術・学術審議会によるものとなっていますが、実際に内容を検討しているのは、その下に設置された脳科学委員会及びその調査検討作業部会が行っています。

ここでの協議内容につては、HP上に議事録や資料が提示されていて、基本的にオープンになっています。
また、議事録だけでは分からない雰囲気のようなものは、サイエンスポータルのレポートとしていくつかの会の内容が書かれているので、参考になるかと思います。

まず始めに、この答申案について理解しておくべきなのは、まず文部科学大臣の諮問があるという点だと思います。
今後脳科学研究を進めるべきかどうかという点はすでに済んでいる話であって、諮問の理由として「脳科学の研究開発を重点的に進め、成果を社会に還元する必要がある。」と明確に説明されている。
ただし、そこに明記されているように、長期的に見て「成果を社会に還元する必要がある」とも指摘されています。
ここで期待されている成果は、健康に関わる問題解決などもありますが、一方で、「真に人間を理解するための科学的基盤を与え、心の理解や人類社会の調和と発展につながる科学的価値の高い成果」も期待されています。
そういう理解の上に立って、では国としてどのように取り組むべきかを専門家が議論して答えなさい、というわけです。

社会に還元することと言うと、ともすれば短期的な応用面での成果が取りだたされかねないが、脳科学を考えるときに、そのような短期の成果とともに長期的な学術研究の重要性が当初より意識されているので、脳科学委員会の設置に当たって「脳科学研究を戦略的に推進するための体制整備の在り方のほか、人文・社会科学との融合、さらには大学等における研究体制等を含めた長期的展望に立つ脳科学研究の基本的構想及び推進方策の検討を行うことから、研究計画・評価分科会と学術分科会学術研究推進部会との合同設置とする。」という、特異な形を取っていることも、この答申案を考える上で理解しておいた方が良いと思います。

従って、今後更に議論していく上では、トップダウンの戦略的な視点と学術研究のボトムアップの視点、短期から長期的な視野をバランスよく捉えることが関係者に求められていて、ともすると単純に「基礎研究は重要」と言い放ってしまうだけになりがちであるが、全体として脳科学を大きく進めていこう、新しく変えていこうという流れを遮らない議論が出来てほしいと思います。

まず前提条件の話だけで長くなりましたが、次は中身に入っていく予定です。

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